急性緑内障発作acute glaucoma attack

病態/特徴

急性緑内障(閉塞隅角緑内障)発作は、眼圧が急激に上昇して生じる緊急性の高い病態です。隅角(角膜と虹彩の間の房水の排水路)が急激に閉塞するため、房水(眼球内部を循環する液体)の排出が障害され、眼圧が一気に高まります。視神経への圧迫が短時間で進行し、適切な処置が遅れると重篤な視野障害や失明に至る可能性があります。日本人を含めたアジア人では、解剖学的に前房が浅く隅角が狭い傾向があるため、急性発作のリスクが高いとされています。

症状

眼圧の急上昇によって激しい眼痛や頭痛が生じることが特徴で、こめかみや後頭部にまで及ぶ強い痛みを伴う場合があります。また短時間で視力が低下し、視野がかすむことがあるほか、明るい光源を見ると虹のような輪が見える虹視がみられることもあります。さらに激しい痛みや自律神経への刺激によって吐き気や嘔吐を催す場合があり、眼球結膜の充血や角膜浮腫、そして瞳孔の中等度散瞳が起こって動きにくくなることも大きな特徴です。

原因

瞳孔が中ほどで固定される(たとえば暗い場所で瞳孔が拡大するなど)ことで虹彩が房水の流れを遮断し、急激に眼圧が上昇する瞳孔ブロックが主な原因として挙げられます。もともと前房が浅く隅角が狭い目や遠視の人、加齢によって隅角が狭くなるケースなどは特にリスクが高いとされています。また抗コリン作用をもつ薬を使用している場合や暗い環境で長時間過ごす習慣があると、発作が誘発されやすくなることがあります。

検査/診断

急性緑内障発作が疑われる場合には眼圧測定で急激な眼圧上昇を確認し、隅角検査(ゴニオスコピー)によって隅角の閉塞状態を直接観察します。さらに細隙灯顕微鏡検査を行い、角膜や虹彩、前房の深さなどを評価し、眼底検査では視神経乳頭の陥凹拡大や網膜に異常がないかをチェックして緑内障性の変化を確認します。

治療

点眼薬や内服薬、静脈投与などによって迅速に眼圧を下げる緊急降圧処置を行い、具体的にはピロカルピンやβ遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬(アセタゾラミド)などを組み合わせ、必要に応じて高浸透圧剤を静脈投与します。隅角の閉塞を解消するためにはレーザー虹彩切開術で虹彩に小さな穴を開け、房水の流路を確保する方法が有効で、再発予防にもつながります。さらに白内障がある場合は白内障手術を行い、隅角形成術や緑内障手術を検討することもあります。

予後

発作に対して迅速かつ適切な治療を行えば、視力や視野を温存できる可能性が高くなりますが、発症から治療までの時間が遅れるほど視神経へのダメージは進行し、視野欠損や視力低下が不可逆的になるリスクが高まります。片眼に急性発作が起きると、もう片眼も同様に狭隅角の可能性があるため、予防的なレーザー虹彩切開術などの処置が推奨されます。定期的な眼科受診による経過観察も非常に重要で、リスクの高い方への早期教育や検診体制の整備が急性緑内障発作による視機能障害を防ぐうえで欠かせません。

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記事の監修者

清水 映輔

理事長

清水 映輔

保有資格

  • 日本眼科学会認定眼科専門医
  • 医学博士 (慶應義塾大学)
  • 難病指定医
  • 身体障害者指定医