アレルギー性結膜炎について
アレルギー性結膜炎について【2022年Ver.】
今年もヒノキやスギによる花粉症の季節がやってきました。
日本気象協会の発表によると、2022年春の花粉飛散予測は、九州や北陸、関東甲信、東北では例年並み、四国、中国、近畿、東海では例年より少ない見込みです。前シーズン比で見ると、九州や東北は地域差が大きく、四国、中国、近畿の飛散量は少ない見込みです。一方、東海、北陸、関東甲信、北海道は前シーズンより多い見込みですので、前シーズンは症状が弱かった方も万全な花粉症対策が必要になりそうです(*1)。また、東京都健康安全研究センターによると、花粉症患者数が2人に1人と増加傾向にあり、我慢できない目のかゆみを1回でも感じると生活の質(QOL)に影響したことが報告されています(*2,3)。飛散時期は、スギ科は2月上旬から5月上旬まで、ヒノキ科は3月下旬から5月下旬までと報告されています(*4)。
どのように予防・対応すれば良いのか
大きく分けてセルフケアとメディカルケアの2つに分けることができます。
1.セルフケア
花粉が目の表面に付着して、花粉内のアレルギーを引き起こす成分(抗原)が、白目(結膜)から侵入することでアレルギー反応が始まります。つまり、抗原が体内に侵入しないようにすれば良いということになります。具体的な対応方法として下記があげられます。
・花粉飛散情報の確認
・家に入る前にコートを叩くなど、花粉を持ち込まない室内環境
・マスク、メガネで保護(ゴーグルではない通常のメガネでも90%程度カットできます)
・人工涙液による洗眼
特に、飛散情報の確認は、テレビやラジオ、インターネットでの情報をこまめにチェックすることもおすすめですが、最近は花粉症シーズンにあわせて予測される気象状況からかゆみなど目の症状の注意レベルとその対策、お薬の使用時間をプッシュ通知でお知らせするなどの機能を実装した医師監修のアプリ「かゆみダス~目のかゆみ注意報~」が、参天製薬よりリリースされていますので、是非ともご活用ください。
2.メディカルケア
花粉症患者さんにおいて、生活への支障度やQOL低下いずれも「かゆみ」となります。抗原が体内に侵入すると、肥満細胞という細胞からかゆみを引き起こすヒスタミンという物質が放出され、神経や血管に発現しているヒスタミン受容体(ヒスタミンが座る椅子みたいなもの)に結合して、目や瞼のかゆみ、赤み、腫れを自覚することとなります。そこで、この一連の流れをブロックすることを目的とするのが、抗アレルギー点眼薬などの薬剤を用いたケアになります。メディカルケアでポイントとなることは以下の通りです。
・何よりも用法容量を守って点眼をすること
・防腐剤無添加の点眼がおすすめ(防腐剤が無い方が目の組織が傷みにくいので、アレルギー反応の悪化を抑えられます)
・飛散開始2週間前(2月上旬)から点眼を開始する(ヒスタミン受容体を減らすことでヒスタミンが座る椅子を減らしてしまう(=インバースアゴニスト効果といいます))
・症状があってもなくても点眼を続ける(痒くなってから点眼(=リアクティブ点眼といいます)だけでなく、発症前からあるいは落ち着いていても花粉の飛散時期には目薬を続ける(=プロアクティブ点眼といいます)ことも重要
・目だけでなく鼻にも症状ある場合、抗アレルギー薬の内服薬も効果的
当院には、眼アレルギー疾患を専門に、大学で臨床・研究に従事している医師が在籍しておりますので、お悩みの方はお気軽にご来院ください。
<参考文献>
*1 日本気象協会「2022年春の花粉飛散予測(第3報)」
*2 東京都健康安全研究センター「花粉症患者実態調査報告書」
*3 深川和己 他:アレルギーの臨床,39,825(2019)
*4 鼻アレルギー診療ガイドライン2020年版(改訂第9版)